ボスのディープバリュー実践

バリュー投資の実践記録。投資成績、銘柄研究を中心に掲載。

キクカワエンタープライズ(6346)

2019/09/25: 3450円で買付

2019/11/29: 3920円で保有


企業のバックグラウンド

キクカワエンタープライズは、木工機械を主力とする三重県の製造メーカーである。

10年前から日本は国策として、木材の自給率の高める政策を取っており、同社の木工機械は2019年度はその恩恵を受け急成長した。

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しかし、2020年度予想は大きく反落。消費増税の影響で木材の消費先である建築関連の需要が萎み、設備投資を控える動きが出た為である。

この結果、同社の株価はネットネット水準まで売り込まれ、私のような資産バリュー投資家のスクリーニングに掛かることになった。

 

投資に至るケーススタディ

投資決断時点2020年1QのBSから見積もったNAV(正味資産価値)は72億円(現金68億+売掛12億+証券9億-負債17億)。発行済み株式数から自社株を除いて計算した、一株あたりのネット資産価値は5633円となる。

一方、当時の株価が3450円なので、本質的な価値よりも38%の値引き価格で購入出来ることになる。充分な安全域を持ったネットネット株である。

 

同社の割安の理由は次の2点だと考えられる。

1つ目は前年比当期利益で-70%と、業績が大きく悪化していることである。追い討ちをかけたのは2020年度1Qと同時に発表された下方修正だろう。

しかし、悪いと言っても利益水準は2018年度水準でしかなく、今年度、業績悪化したと言うよりは前年が特需で良すぎたという見方が正しいと思う。

消費増税、米中貿易戦争は同社の業績に良からぬ影響を与えるものと考えられるが、仮に赤字となったとしても、過去10年で最も悪かった年の当期損益は2.3億円(2010年)であり、今の安全域を食い尽くすには10年以上かかる計算となる。10年単位で不振となる期間が続くとは考えにくいと考えている。


2つ目は2018年後半から2019年1月にかけて株価が急騰したこと。その後、2020年度予想を発表した直後に急落して今の水準になった。

このような株価推移をした銘柄は、上昇しても高値で購入した投資家の売りが入るため、上値が非常に重い。いくら安くても大多数の投資家が避けるポイントとなる。

上値は重いのは否定できないが、多くのネットネット株は何かしら問題を抱えているものである。

逆に私のように大きな安全域を要求する投資家にとって、同社の株を買えるタイミングは今しか無いと思った。

 

また、私は同社の顧客である林業に対して、強気な見方を持っていた。

背景には近年日本が国策として、豊富な森林資源を利用した木材の自給率を高める政策を取っていることが挙げられる。

製材の低コスト化を担う同社の製品は、製材メーカーが生産力を高めるにあたり重要であろう。

この点は、環境問題・地方経済問題など折に触れて注目が集まり、カタリストとして機能することを意味する。

同社の経営陣も事業の将来性に対しては以下(2019年1Q短信)の通り、非常に強気である。

今後の業績見通しにつきましては、国内におきましては、短期的には消費税増税に伴う慎重な見方が支配的になるとは思われますが、木工機械関連では環境対策として資源量の豊富な国産材の更なる自給率改善に伴う設備需要、工作機械関連では幅広い産業分野において、著しい人手不足に対応した省力化投資や生産性向上に資する設備需要が期待されると思います。

 

経過

2019/11/29現時点で株価は3920円、買付時点から+12.8%上昇した。主な理由は米中貿易摩擦の懸念が後退し、投資家心理が改善したことが大きい。

 

2019年2Q決算は経常利益進捗率が35.4%と低く、一株ネット資産は微減し、5,553円となった。これらについては、同社のように利益が特定の期間に集中する商売では特に心配する必要は無いと考えている。

経営陣も、業績予想を据え置いた上で増配を発表した。強気の姿勢は業績予想の達成への自信の表れと見た。


ただ、過去の株価推移を見ると、4000円前後での出来高が多かったことから、この辺で「やれやれ売り」に押され、今後の株価はしばらく停滞すると見ている。

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事業環境に変わりはなく、依然として大きな安全域が確認出来ることから、引き続き保有して見ていきたい。